嚥下障害

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嚥下障害とは

嚥下障害(えんげしょうがい)とは、食べ物や飲み物を正常に飲み込むことが困難になる状態を指します。この障害は、物を飲み込むときの口腔、咽喉、食道の3つの過程に異常が生じることによって引き起こされ、特にがん患者にとっては重大な問題となります。

嚥下障害は食事中の窒息や肺炎のリスクを高め、嚥下障害による栄養不足や生活の質の低下に深く関わります。

嚥下障害の原因

嚥下障害の原因は多岐にわたりますが、ここでは代表的なものをいくつか紹介します。

がんの直接的な影響

がんそのものが嚥下障害の原因となることがあります。例えば、頭頸部がんや食道がんにより腫瘍が成長し、物理的に食べ物や飲み物が通る道を塞ぐことにより嚥下障害が発生します。

また、がんの治療である化学療法や放射線療法が神経や筋肉にダメージを与え、嚥下機能を低下させることによる原因となることがあります。

治療後の影響

がん治療後にも嚥下障害が現れることは少なくありません。手術による解剖学的な変化や、放射線療法後の組織損傷が嚥下機能に影響を与えます。特に、舌や咽頭、食道の回復が遅れる場合には、嚥下機能が長期的に損なわれることがあります。

嚥下障害の症状

嚥下障害の症状は、個々のケースによって異なりますが、一般的には以下のような兆候が見られます。

食事中のむせ

食事中に頻繁にむせることは嚥下障害の典型的な症状です。むせることで食べ物や飲み物が気道に入るリスクが高まり、誤嚥性肺炎の原因となります。このため、がん患者やその介護者はむせ症状に特に注意する必要があります。

体重減少と栄養不足

正常な食事が困難になるため、嚥下障害のある患者は体重減少や栄養不足に陥るリスクが高まります。これにより、治療効果が低下したり、免疫力が低下して合併症が起こりやすくなることが懸念されます。

肺炎のリスクが高まる

気道反射の機能が低下している場合には、むせにならず肺炎を引き起こす可能性が高まってしまいます。

嚥下障害の診断と治療

嚥下障害の診断には複数の段階があり、それぞれが重要とされています。

診断方法

嚥下障害の診断には、内視鏡検査やX線検査などの画像技術が用いられます。また、専門的な嚤(いわ)ん下評価試験も行われ、これらの診断方法を組み合わせて総合的に判断されます。

リハビリテーション

嚥下障害の治療にはリハビリテーションが大きな役割を果たします。嚥下療法士が患者一人ひとりに合わせたプランを作成し、筋力や嚥下機能の回復を図ります。

また、代替食品や飲み物の工夫も効果的です。例えば、ゲル化剤を使用して食べ物や飲み物を滑りやすくする方法が一般的です。

嚥下障害がもたらす生活への影響

嚥下障害は患者の日常生活に大きな影響を及ぼします。

社会的孤立

嚥下障害のある患者は食事が困難であるため、社会的な食事の場に参加しづらくなります。この結果、社会的孤立感が強まり、精神的なストレスを抱えてしまうことが多いです。

生活の質の向上

適切な嚥下障害の管理によって生活の質を向上させることが可能です。専業の医療チームによるフォローアップや、適切な栄養管理が重要です。また、新しい技術や治療法の進展による医療の発達が嚥下障害の影響を和らげる一助となります。

以上が嚥下障害に関する解説です。嚥下障害はがん患者にとって重大な問題であり、その管理と治療には専門的な知識が必要です。適切な診断とリハビリテーションを通じて、患者の生活の質を向上させることが重要です。